【教科担任制】小学校でも導入!!

【教科担任制】小学校でも導入!!

 昨年末、小学校高学年でも教科担任制の導入が検討されているニュースが流れました。文部科学大臣もこれについて会見で話していた。教科担任制になることで、小学校はどのように変わるのでしょうか。簡単にまとめてみたいと思います。

学級担任制と教科担任制の違い

 学校における担任の先生は大きく2つの制度があります。小学校で導入されている学級担任制と中学校以上で導入されている教科担任制です。それぞれどのような特徴があるのでしょうか?

学級担任制とは?

 学級担任制はほとんどの小学校で導入されている制度です。担任の先生が1つの学級を受け持ちます。その先生が担任している学級のすべての授業を行います。つまり、1人の先生が国語や算数などの主要教科、体育や音楽、図工などの技能教科などすべての教科を指導するということです。また、特別な教科道徳(道徳)や総合的な学習の時間(総合)などの指導も行います。

教科担任制とは?

 教科担任制はほとんどの中学校、高校で導入されている制度です。教科ごとの担任の先生異なりが授業を行います。国語は佐藤先生、算数は鈴木先生、理科は○○先生…といった具合に教科ごとに担当する先生が変わります。もちろん、学級担任もいて、道徳や総合、学活などの指導を行います。

場所 子どもと先生との関わり 先生の専門性
学級担任制 小学校 担任だけ 得意不得意がある
教科担任制 中学校・高校 教科ごとの先生 専門性が高い

なぜ小学校で教科担任制に?

 では、なぜ小学校ででも教科担任制を導入しようと検討されているのでしょうか?

導入を検討された背景

 小学校の教育現場を取り巻く環境は大きく変化しています。また、子どもが学ばなくてはならないことも大きく変化しています。こうした、社会の変化とそれに伴う教育の求められる能力の変化などに対応していく必要があります。そのためには、今までの学級担任という形態を変えていかなければなりません。そこで、中学校や高校で導入されている教科担任制を取り入れようということになったのです。

導入を検討された目的

 そうした背景を踏まえ、大きく4つの目的があります。

・学力向上

・複数の教師で児童をみる

・中学校との連携 中1ギャップ

・教員の働き方改革

・学力向上

 第一に子ども学力向上を目的としています。各教科に対する専門性をもった教師が教科指導を行うことで、授業の質を向上させることができます。小学校の先生は全部の教科を指導できるように学んでいますが、得意不得意はあります。不得意な教科は専門性をもった教師に指導してもらったほうが、子どもの学力は確実に向上するのです。

・複数の教師で児童をみる

 次に子ども一人を担任の先生1人でみとるのではなく、複数の教師でみとるということです。教師も子どもも人間です。当然、合う合わないがあります。合わない先生とだけ一年間、関わらなくてはいけないというのはつらいですよね。ただ、教科によって先生が違えば、何人もの先生と関わることができます。なにか相談したいことや悩み事があったら、話しやすい先生に相談に行けるのです。教師も複数の目で子どもを見ることができるので、子どもの様子や成長、課題などを共有しながら指導にあたることができるのです。

学級という閉ざされた環境で一人の先生だけと関わるのではなく、複数の先生と関われる環境をつくることは非常に意味のあることなのです。

・中学校との連携 中1ギャップの解消

 中学校にあがると、小学校やこれまでの生活との違いから、中学校生活になじめず悩みや不安が出てきたり、登校渋りや学力低下などがおこったりすることがあります。中学校と小学校とのギャップによって引き起こされるので、「中1ギャップ」と呼ばれています。

 小学校の高学年から、教科担任制を実施することで、授業形態のギャップを少なくすることができます。また、複数の先生と関わって学校生活を過ごすという経験もできます。中学校への円滑な進学を行うことにつながります。

・教員の働き方改革

 最後に教員の働き方改革をすすめることができます。現状の教育現場では、児童一人ひとりを丁寧にみとって、教材研究を行い、授業をするだけの余裕がありません。その結果、残業代が支払われないにも関わらず、残業をしなければならないということになっています。そんな状況では、質の高い教育を行うことは難しいでしょう。教科担任制が導入されれば、授業を行わない時間が生まれ、教材研究を行うことができたり、心に余裕が生まれたりして質の高い教育を行うことができると期待されています。

小学校教育を行う教員にとっても、教育を受ける子どもにとっても、メリットのある政策なのです。

どんな形で導入される?

 中学校や高校のようにすべての教科で専科の教員が配置されるわけではありません。では、実際にどのような形式で導入されるのでしょうか。

実施される教科一覧

 すべての教科で教科担任制を導入されるわけではありません。優先的に導入される教科は、外国語・理科・算数・体育の4つです。教科指導の専門性をもった教師によるきめ細やかな指導と中学校の学びにつながる系統的な指導の充実を図るという観点から、これらの教科が選ばれました。

 外国語はすでに専科の先生が担当していたり、理科や算数ではSTEAM教育の充実を目的としたりといった理由から、優先して実施されることとなりました。

 

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実施される体制は?

 小学校高学年の教科担任制を導入するにあたって、教員定数を4年間にわたり2000人ずつ増加させる予定になっています。最終的には8800人程度増加させる予定です。全国にある小学校は20000校程度あります。8800人程度の増員では、教科担任制を導入することは到底できません。(国の計画ではこのようになっています。各都道府県や自治体によってはもっと増員する地域もあるようです。)そこで、いくつかのパターンが検討されています。

・専科教員の加配

・学級担任と専科が一緒に授業をする

・中学校の先生が授業

・学級担任同士で交換する

・専科教員の加配

 教科担任制と聞いて、まず思いつくのがこのパターンだと思います。新たに外国語・理科・算数・体育を指導する先生を新たに採用し、各校に配置するというものです。あるいは、学級担任をしている先生を専科の先生として勤務してもらうというものです。

・学級担任と専科が一緒に授業をする

 新たに専科の先生を採用し、学級担任と専科の先生が協力して授業を行うものです。これまでもTTという形で、学級担任が授業を進め、別の先生が支援に入り授業をサポートしたり困っている子に教えたりする対応をとってきました。これをこれまで以上に充実させるというものです。学級担任が主となって授業を進めていましたが、今後はTTで支援に入る先生が主となって授業を行っていくことも考えられます。

※TTとは、チーム・ティーチングの略で2人以上の先生が教科指導を行う授業形態のことです。TTによる教科指導の方法も多数あります。ここでは、一人が主となって授業を進め、もう一人が困っている児童の支援を行うという方法を取り上げています。

・中学校の先生が授業

 近隣の中学校の先生が小学校に行き、授業を行うというものです。すでに中学校で専門教科の授業を行っている人に授業を行ってもらうので、教科の特性や系統性を生かした質の高い指導を行うことができます。また、来年度以降に入学してくる子どもの様子や実態を把握することができ、中学校に進学してからの指導を充実させることが期待されます。

 ただ、中学校の先生も多忙を極めており、小学校にいって授業を行うだけの余裕があるわけではありません。その余裕を作るために、なんらかの策を講じる必要があります。

・学級担任同士で交換する

 最後に学級担任同士で教科を分担して教科指導を行うというものです。学年のクラスが3クラスあれば、1組の先生は学年3クラスの外国語を、2組の先生は3クラスの理科を、3組の先生は3クラスの体育を指導するといった感じです。学年の先生で分担することで、それぞれの先生の得意を活かすことができます。また、学年の子どもの様子を知ることができ、学年の先生で学年の子どもを指導していくことができるという利点があります。また、一人の教員が行う授業の数はあまり変わりません。しかし、指導する教科が少なくなるので、指導する教科の教材研究に専念できます。なので、質の高い教科教育につながることが期待されています。

これらのパターンを組み合わせたり、その学校独自の教科担任制を導入したりしてよりよい教育体制となっていくことが期待されています

まとめ

 今後導入される予定の小学校での教科担任制について話してきました。これで導入されて慌てることもないですね。よりよい教育環境となっていくことを期待し、見守っていきましょう。